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ひとりぼっち ©1997

いたくって
いたくって
むねがいたくって

こっそりと
ひざをかかえて
ひじとももとせなかで
いたむむねをしっかりとだきしめた

そのかたちのまま
くらいよるのなかを
まるくまるく
ちいさく
ちいさく
めんせきのないてんになって
くうちゅうにぽつんとうかんですすむ

どこまでも
どこまでも
はてしなく
いたみはむげんだい
いたみはちょうこうそく
あらゆるほうこうに
いっしゅんでとどくから

いたくって
いたくって
むねがいたくって

それがいきていること
ひとりぼっちでも
いのちのあかし

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に お い ©1980

一日だけあずけられた あの男の猫は
あまえた声で なきながら
そっと ふとんに もぐろう とする
あたしは やさしく 抱いてやるよ
もちろん やさしく やさしく ぎゅっと
抱いてやる 猫の毛を 顔に
近づける くちびると 鼻のあたまを
猫の首のやわらかい毛の中に
うずめる におい あの 男の におい
あの男も こうして 猫の首の やわらかい
毛の中 に くちを うずめるの か
あの男の におい が する している
と おもう しんじる たばこの
におい も まじっている あの男は
たばこの においもする
あたしは 猫の毛を くんくんと
猫がやるように かいでまわる
そうだあの男の猫なのだ と すこし
かなしい のは あの男 では なく
これは あの男の猫なのだ
あの男の においのうつった 猫なのだ
しばらく かぎまわると においが
かんじられない 鼻を 猫から離し
じっと ながめる 毛布の におい
の 中に いる 猫は ひとみが
黒く 大きく ふつうより かわいい
ふくざつな シマもようが 茶と黒の
からだ全体を うまく おおって
トラねこ の 口と鼻を かこむ線は
まっくろで 口をあけると すこし こわい
また 猫の毛の中に 顔を うずめる
においは すこし うすれてくる
それだけ よけいに あたしは強く
息を すう あの男のにおい を
ほしい の では ない あの男のにおい
のする猫を においたい たしかに
においは うすれて ゆく あたしの
かいだ におい は あたしの肺の中で
沈んでいる この手や この胸に すこしは
しみたか においは どこへ いくのか
においだけがほしい だから
抱いてやる 猫は 胸の中で
少し軽い においがぬけて そして
だんだん 重くなる あたしの においが
する 猫になる もう あの男の猫では
ない あたしの においのする 猫

腕をとく 猫は あたしにしみた あの
男のにおいを かぐ 猫はさらに
重くなる 男のにおいを とりもどそうと
するの 肺の中に 沈んでゆく 猫の
肺の中で あたしのにおいと
あの男のにおいが いま まじる

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とむらい  ©1980

きょう
おそうしきを しました
おかあさんと しました
あたしは なきました
おかあさんは 箱の中で
めをつぶっていました
あたしが ないている と
おかあさんも いっしょに
なきました
こんどは あたしが
箱の中に いました
ひざを かかえて
からだを まるくして いると
からだの まわり に
あたたかい なみだが
ゆっくり ひろがりました
おかあさんの
おなかのなかに
もどってゆくのだと
あたしには わかりました
おかあさんが 
いっしょに きてちょうだい と
いうので
いっしょに
なきました
ならんで すわって なきました

だれのおそうしきですか
だれのおそうしきでしたか

おかあさんはしっています

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