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 Fukue  ©1983
           
あの あっけないわかれを
ずっととっておきたい気もしましたが
再会は ほとんど突然に
しくまれたようにすばやく
実現されてしまったのだね
           
きみの いちまいのはがきが
あめのひに とどく
           
残念だったというのでしょうか
それとも
うれしかったと
           
きみのうまれたまちに
きみはただひとりでもどり
そのまちについて
わたしにはなしてきかせたことを
ふたたび
きみのまわりに みている
           
ここではあめがふっているが
きみのところでは はれているのかもしれない
いますぐ それを たしかめたいけれど
とおくへいくのには
じかんがかかり
じかんをかけると
天候も変化する ということを
わたしたちは じゅうぶん こころえている
           
きみのめに いま うつっている風景が
いまわたしのめにうつるように
それだけを念じつづけて
なんどもはがきを なめるように読みましたが
わたしのめには
きみが はがきをかいているてつきさえ
うつらなかった
           
フクエジマにいったことがない
それだけがりゆうであり
ひとつのすくいでもある
           
けれど
愛情だけがひとをむすぶのではない
 と
           
おもいました

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駅を降りたら雨が降っていて
傘を持っていなかったからそのまま歩いた
雨は細かくて音もなく空から落ちてくる
迷いながらしかたなく地面に届いてしまうみたいに
なげやりな雨粒のせいで
いつのまにか髪が濡れブラウスの肩が濡れ
ジーンズの膝が濡れ
あたしの体は重みを増した
風が吹き抜けると熱が奪われて鳥肌がたつ
はやく部屋に戻って雨の匂う服を脱ぎ捨て
熱いシャワーをあびて乾いたタオルにくるまり
いい香りのするコーヒーを飲もう
そればかり考えながら
徹底的に陳腐な具体を切望しながら
あたしは歩いている

毎日テレビを見るので
遠い国で戦争が続いているのは知っているから
こんなとき
帰れる場所があるのはありがたい
そう思うけれど
それはしあわせとは何の関係もない
誰かがそばにいてやさしくしてくれれば
肌を合わせてぬくもりを感じたい
そうも思うけれど
それは愛とは何の関係もない
まるでほとんど言葉のイメージは
現実を指し示しているようだけれど
たいていは無関係

鳥肌のあたしの考えは貧困で
徹底的に陳腐な具体はときに行動をたやすくする
人の気持ちはゆらゆらと
雨にさえ左右されるというのに
戦争と名付けてしまえば砂漠でも闘える
憎しみをバネにして
迷彩服をまといヘルメットをかぶり
銃をたずさえて
見知らぬ人々を撃ち殺しにいくなんて
たとえどこかの神様が許したとしても
それは正義とは何の関係もない
あるいは愛
あるいは自由
あるいはしあわせ
あるいは
およそ考えうるすべてのいい言葉とは何の関係もない

それでも冷たくみじめな重いからだは
手触りのいい言葉を探し当てようとする
愛とか自由とかしあわせとか
見たこともないのにそこにあってこの口で声にできるから
どうかすれば手に入れられるように思えたとして
それは誰のせいだろう
雨を恵みと知りもせずに
欲しがったのは遮るものだ
あるいは正しさ
それに似たもの

濡れながらあたしは考えている
大きなまちがいだって簡単に見逃したことを
とことん鈍感ではないから
ドアの前に忘れた傘を目にすれば
とうとつに泣きたいような気持ちになるだろう
けれどそれは悲しみとは何の関係もない

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