ながいあいだ会わないでいたから ©2003
ガラス越しの長い夕方の日差しの中で
猫のように丸くなる
顔をあのひとのひざにうずめ
なつかしいにおいをかいで
目をとじる
きみ
髪を伸ばしたんだね
ずいぶんほっそりして
それに
笑わなくなったんだね
つっかかるようなものの言い方するし
とげとげして
なんだかずいぶん
手が遠慮しても声がするすると下着まで脱がせてしまうから
あたしはますます丸くなる
会わない間にいろいろあったのよ
そう言ってもよかったのかもしれないけれど
声にならなかった
自殺を図ったの
手首の傷見てよ
子供は死んだ
クスリ漬けでパクられたし
からだも売ったわ
そんなことを自慢できる
小説家がうらやましい
などとふと思って
ひざの上の頬が熱く赤くなる
恥ずかしくて恥ずかしくて
ぐいぐいと顔を押し付ける
あのひとのひざにも力が入る
あたしは猫のまま
呑み込んだ言葉のかわりに甘えた鳴き声を出す
求愛ととられてもかまわない

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