アール・グレイ ©1983
香料が配合されている
発酵させた後乾燥させた葉に少量の熱湯を注ぎ
二分ほど待つ
湯の色がオレンジに変わり、葉がひらく
氷をつめたグラスにあみで葉を受け色のついた液体だけを注ぎ込む
独特の香りが漂う
彼と私は
その飲み物を好んだ
あるキマッタ店でバラバラの席に腰掛け
木製あるいはステンレス製のパズルに熱心に取り組みながら
その飲み物を飲んだ
クチのなかやノドに同じ香りが残る
彼と私は
いっしょにねむらない
彼は私でないオンナと
私は彼でないオトコと
ねむり、性交した
あるトキ、あるいはツネに
彼と私は一台のバイクに乗り
彼がそれを運転し私は彼の背中にもたれかかって
あわい風を同時に楽しんだ
もちろん声がとどかない戸外では
スピードもあり走り続けているため
それでも彼は私に私は彼にささやき続ける
互いの衣服をはさんで背と胸を密着させていると
体温がつたわるかに感じられる
彼の胸や腕や私の背や脚が凍えているにもかかわらず
からだの中からあついかたまりがひとつふたつと姿をあらわす
それは独特の香りを放ちのどもとまでこみ上げた
発酵し乾燥させられ熱いものにふれるとひらいてゆく
彼と私は性交する必要を持たない
彼と私のそのようなチンモクは
彼のオンナと私のオトコによって
あるとき突然妨げられる
アナタタチハドウイウツモリナノカ
と私は彼のオンナにきつく問われ
ヤメロと彼は私のオトコに命令口調で言われる
かまわないわよと私は言い
(ホントウハナニモハジマッテイナイノダガ)
彼とはそれきりになった
私のオトコは彼をきらい
私の衣服をはぎとり私のカラダをなでさすった
私とオトコは慣れた感触をもつシーツの上で性交したが
いつも、あるいはすでに
彼の背中より冷たいものにしかふれられなかった

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