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 マ ド リ ガ ル   ©2001

チッペナムのような何もないちいさな村で
ノリコの犬のベンソンを散歩させるとき
シモネッティのマドリガルを口ずさんでしまうのは
罪だろうか

ベンソンは大きなレトリーバーで
畑のあぜ道を行ったり来たりするのに忙しく
私はカーキ色の大きすぎる借り物のゴム長をはいて
綱にひきずられながらも楽しく
そこらのありふれた野草さえ
まったくすべてが美しいのに感激してしまう
それは罪だろうか

素朴であることを
シニカルにならないことを
肯定してしまったら
ほんとうは私たちに
話す言葉などいらない
ごくふつうの人にはあたりまえのそんなことが
詩など書いているものにはまるで理解できず
だれひとり救えもしないのにとくいになって
店を広げつるつるとあれこれ並べてしまえるのは
ただただ言葉の先にあるものを
感じられぬ鈍感さの証ではないか

無言への憧憬を捨てられぬまま
凡庸なマドリガルを
私はエンドレスで口ずさみ
ノリコのベンソンはチッペナムの村の中を
いそいそと歩き続ける
出会う村人たちはみなほほえみを返し
夕暮れて青白く
急ぎ帰る必要もないのは
そんなにも
罪だろうか

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