敵 味 方 ©1984
私はベジタリアンです
好きな言葉は
空席待ちです
いちょうの木のまわりでは
美しい横顔の男たちが
輪になって行進していた
私は今日
台所の流しの前でショウジョウバエを六匹殺しました
両手で飛んでいるところを
パチンと叩き潰したのです
そのうちの二匹は空中で交尾をしている最中でした
思い出して私はそう付け足し
これで自己紹介を終わりますと言って口を閉じた
まばらな拍手があった
私は両手をだらりとからだに沿わせて突っ立ったまま
ショウジョウバエを見ると腹が立って腹が立って
憎くて憎くてあれなんでしょうね
私おだやかな人間なのに
それに動物好きだし肉食べられないのに
平気でショウジョウバエを殺せるのはなぜですか
ときく
行進が途切れて
それはあなたがベジタリアンだからだ
とひとりが言い
それはあなたがゴミだからだ
とひとりが言う
ゴミ ゴミ ゴミ ゴミ
りちぎにリズミカルに
男たちはそうつぶやきながら
行進を再開する
あなたは矛盾していない
なぜなら彼らは敵だからだ
とひとりが言い私の腕をつかんで強く引っ張った
私は男にひきずられながら
彼は味方だろうかとふと思う
いちょうの敵は汚染大気だが
彼らは五分の勝負をしている
とひとりが言う
敵ならば殺してもよいのですか
ときく私
いちょうは耐えるのです
とひとりが言う
汚染は大気を殺してもよい
とひとりが言う
おまえはゴミだとひとりが言う
空席はありません
とひとりが宣告する
ゴミのようなにおいを発散しているのに気づき
しかたなくしかし張り切って
私は敵を待ち構える
ひきずられながら
拍手のポーズで両手をかかげて

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