ひとりぼっち ©1997

いたくって
いたくって
むねがいたくって

こっそりと
ひざをかかえて
ひじとももとせなかで
いたむむねをしっかりとだきしめた

そのかたちのまま
くらいよるのなかを
まるくまるく
ちいさく
ちいさく
めんせきのないてんになって
くうちゅうにぽつんとうかんですすむ

どこまでも
どこまでも
はてしなく
いたみはむげんだい
いたみはちょうこうそく
あらゆるほうこうに
いっしゅんでとどくから

いたくって
いたくって
むねがいたくって

それがいきていること
ひとりぼっちでも
いのちのあかし

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男 に   ©1999 

ふてくされ死にかけの
飼いならされたおちんちんたちよ
目覚めなさい
金髪マスカラべったりの若い娘
寄せて集めたウソっこ胸元太ももを
横目で盗み見ることしかできぬ主人の
どうあれちんぷなまぬけづら
そいつときっぱり訣別し
その手の馴れ馴れしさから
猿のようにむなしいなぐさめから逃れなさい
湧き上がる衝動につき動かされ(ああ家庭の幸福
激しく空回りしつつもいきり立ち(やりてえ けど
のたうつ女体を相手に(ああ世界の平和
ひるむことなく繰り返したピストン運動を
思い出せさあ思い出せ
あの先延ばしされる快感と情熱の一体化の
解き放たれたおまえ自身の
なんと力強く自由であったか
恍惚を手にしたおまえ自身の行儀悪さが
なんと美しく時を止めたか
ふてくされ死にかけの
飼いならされたおちんちんたちよ
いますぐ目覚めなさい
名ばかりの妻とのぎりまんを(夢の虹色 世界は一家
札びらに群がる女の味気ない喘ぎ声を(ああんやめて なんて
断固として拒絶せよ(愛のばら色 世界は一つ
おまえたちのほとばしる純情をもう一度
生きよおっ立ち突っ込み震えよ
誇り高く太く硬く屹立したまま
おまえたちを切望するやわらかなくぼみで
祝福されずとも
歓喜を分かち合いなさい

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   ©1999

ずっとずっと苦しかったから
僕は
空を飛ぶようになったんだ
彼はそう言いました

きみも飛んでみたいかい
そうきかれてうなずく

彼は小さなおもちゃみたいな飛行機に
わたしを乗せて舞い上がる
空へ

たかくたかく

ちらっと街が見えた
車で一分も走れば通り過ぎてしまえるメインストリート
たった一つしかない雑貨屋には
グレープフルーツの香りのシャンプーと
グレープフルーツの香りのソープと
グレープフルーツの香りのボディーローションと
グレープフルーツの香りのタルカムパウダーが
山のように積んであった
それが粗末な飛行場のあるアメリカの田舎町の
名物なのです

昨夜はたった一軒しかないレストランに行きました
フライドチキンを注文したら
太ったウェイトレスが
鶏一羽分のから揚げののっかった大きな皿を
ドスンとわたしの前に置いた
白いエプロンの胸当てからはみ出る大きなおっぱいが
何も言わせない
それからあっけにとられているわたしのところに再びやってきて
同じくらい大きな皿をもう一枚置いた
ニンジンのグラッセとゆでたインゲンが
広大なマッシュポテトのシーツの端で反乱を起こしかけていて
彼はそれを見て
声を出して笑った
子供みたいに
ほんとうに愉快そうに

黒く枯れた深い井戸のように
乾いた闇を瞳の奥底にたたえている彼の
そんな顔を見たのはうまれて初めてのような気がして
胸がつぶれるほどうれしくてはしゃいだのに

空の上では
風のうなりとエンジンの音が
鼓膜を突き刺し
皮膚をあわ立たせる
荒地の上空でわたしは昨夜の声をなくした

自由になれると思ってただろ
空を飛べば
飛べさえすれば

彼にそう言われて
わたしは
泣き出しそうだった

重力が
圧倒的に自分を地面に縛り付けている
その力を感じただけだったからです
パンパンにむくんだ足と
感覚を失った面の皮が悲鳴をあげる
自由などなかった

だってさ
僕らは
鳥じゃないんだ

彼は
空を飛んでみたら
もっともっと苦しくなったんです
きっと

お皿の上のチキンを見て
彼が笑ったのは
きっと翼が自由を得るための道具ではないと
すでに知っていたから

彼とわたしは
完全に行き場を失い
もう一度飛びたつ

そして地面に向かって墜落しました
ためらいもなく
翼を夢みなくなったので
すでに一度失われてしまった命を捨てるのは
微塵もこわくありませんでした

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