エース登場(D地点で4)
2月26日(土)くもりときどきはれ
そのうち
私は
自分のカラにとじこもるようになった
次々起こる非現実的なできごとに対処できなくなって
ノイローゼになる
ヒステリーと抑うつ状態を繰り返す悲惨な毎日が
延々と続いた
しょっちゅうパニックを起こし
拒食症になって
入院
そこで出会ったK先生が
なにげなくおっしゃった一言が
私を救った
「パニックになりそうになったら
いままで自分に起こったいいことを思い出して
そのことを考えるんだ
ひとつぐらいあるでしょう
いい思い出が」
そう言われて
考えて考えて
私がたったひとつ思い出したのが
殿のことだった
その日は殿の19歳の誕生日で
ふたりは寮の近くのお寿司屋さんでデート
帰り道
真っ暗な畑(野原?)の中を歩いているとき
突然殿が
「いま暴漢が出てきたら
おれ、命がけで闘っちゃうんだよな」
と言ったこと
そのシーン
それを突然
ありありと思い出したのである
それから
パニックになると私は必死で
殿がそう言った場面を思い浮かべた
不思議なことに
そのシーンを思い浮かべると
パニックは遠のいた
もう誰にも助けてもらえないと思い込んで
絶望していたのに
思い出の中の殿がそう言うと
私は大丈夫なんだと思えてくる
毎日毎日
私はその場面を思い浮かべて
少しづつ正常さを取り戻していった
いいもん
私にはエースがいるから
それがそのころの私の口癖
エースというのは
私が大好きだったジム・キャリーの『エース・ベンチュラ』から
思いついた呼び名
思い出の中の殿の呼び名だった
そして私は
病院でせっせと
『アイ・ラヴ・エース!』を書いた
あまりにも
思い出の中の若い殿が生き生きとしているので
それが実在の人物であるということを
考えるのはむずかしかったが
雨に濡れ
強い風に逆らいながら
黙って歩いていく中年の殿の姿が
私には見えてしかたがなかった
(小説にもそういう男が登場する)
いいイメージではなかったので
ときどき私は
殿のことを考えた
いまどうしているのかな
しあわせに暮らしているんだろうか
私とちがって
ちゃんと生活してるんだろうな
いつか会って
お礼を言いたい
といつも思っていた
けれど
会いに行くどころか
私は電車に乗ることすら
まともにできなかったのだ
P.S.
昨夜ニューヨークグリルでおなかいっぱいごちそうを食べたので
体重が0.6キロ増えてしまった!
これは予想していたのでしかたがないか~
道けわし・・・
P.S.2
鈴木淑子さま
お誕生日おめでとうございます!!!

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